JAAC2024年12月交流会&忘年会 活動報告
JAAC2024年12月交流会&忘年会 活動報告
日時 : 2024/12/7(土) 15:00~17:00 (交流会)、17:30~19:30(忘年会)
開催方法:オンライン併用のハイブリッド
参加人数:リアル8名、オンライン2名 計10名
■活動報告
今回のオフライン(リアル)の会場は、コロナ禍以降、久しぶりに病院の会議室を抜け出し、都心部のレンタルスペースでの開催となりました。都心部の開催で参加しやすいからか、比較的多くの参加者にご参加いただきました。
今回のテーマは、「円形脱毛症診療ガイドライン2024の紹介と治療についてどう考えるか」でした。
冒頭では、植木先生より2024年9月に発行された「円形脱毛症診療ガイドライン第3版」について解説がありました。主なポイントとして、2017年版からの大きな変更点としてJAK阻害剤の取り扱いが新たに追加されたことが紹介されました。この改訂に対する関心は高く、関連する講演会には700人以上の医療従事者が参加しており、皮膚科医の間でも治療方針について悩みが多いことが改めて実感されたとのことです。
JAK阻害剤は、発症から半年以上が経過し、全体の50パーセント以上の脱毛が見られる中等症から重症の患者に適応されます。急性期には使用せず、他の治療法を検討する必要があります。治験では、8年間発毛が見られなかった患者にも効果が確認され、約6割の患者に有効であったとの報告がありました。ただし、継続的な服用が必要で、月額4万円以上という高額な治療費が課題となっています。そのため、第一選択とはされていないものの、ガイドライン上では「強く推奨される」治療法とされています。
現在、日本国内では2種類のJAK阻害剤が使用されており、免疫を抑える作用機序が異なるため、一方で効果が見られなかった場合にもう一方に切り替えるという症例も報告されています。また、薬の服用を中止しても、約3割の患者はウィッグが不要な状態を維持できており、こうしたケースに関する研究も進められています。
JAK阻害剤以外の治療法としては、急性期にはステロイドパルス療法が有効とされ、脱毛範囲が小さい場合には局所へのステロイド注射が推奨されます。また、接触免疫療法(DPCP,SADBE)は保険適用外であるものの、大学病院などでは比較的安価に提供される場合もあります。
この後のディスカッションでは、参加者からさまざまな質問が寄せられました。
まず、12歳以下の患者にもJAK阻害剤が使用できるのかという問いに対しては、アトピー性皮膚炎では既に使用実績があり、安全性も確認されていることから、円形脱毛症においても今後の治験が進むことが期待されるとのことでした。
次に、円形脱毛症を発症した際にどこを受診すればよいのかという話題では、基本的に皮膚科医であれば診察は可能ですが、全ての治療が提供されているわけではないため、専門的な対応が可能な皮膚科専門医を受診することが推奨されました。専門医であれば、必要に応じて他の病院へ紹介してもらえる体制が整っているとのことです。
JAK阻害剤の効果が現れるまでの期間については、使用後9か月ほどを目安に効果を判断するとの説明がありました。また、どのくらいの期間使用できるかについては、リウマチの治療では10年ほど使われている症例もあるため、円形脱毛症においても今後の経過観察が必要とされています。
脱毛症には、ある程度の遺伝的素因が関与しているとされています。一卵性双生児の両方が発症する確率は約55パーセントとの報告もあり、外的要因によって発症のスイッチが入る可能性が示唆されています。また、親子間よりも兄弟間での発症が多い傾向があることから、自己免疫疾患になりやすい体質が背景にあると考えられています。
JAK阻害剤を使用するための条件として、発症から半年以上経過し、全体の50パーセント以上の脱毛があるという要件がありますが、この基準を満たさない場合は保険適用外となってしまうため、原則として守る必要があるとの説明がありました。
最後に、ビタミンDの有効性についても話題に上り、免疫反応を穏やかにする効果があるため、補助的に使う分には一定の意味があるとのことでした。
交流会終了後は、有志で会場近くの海鮮居酒屋に移動し、美味しい刺身を囲みながら、2024年を締めくくる和やかな交流の時間を過ごしました。
平野
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平野
理事長の平野です。